東京地方裁判所 昭和41年(ワ)12826号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本件(二)の土地、建物につき、被告から原告英子への所有権移転登記が昭和三七年七月五日になされたことは当事者間に争いがない。ところで、贈与税は実質課税のたてまえをとる。書面によらない贈与は既に履行した部分を除き当事者間において取消すことができるから、履行によつて取消し得なくなつたときに、その当時の贈与によつて取得した物の価格を課税価格として贈与税納付義務が具体的に発生するものと解される。それは必ずしも所有権移転登記の時と一致しないから、贈与税納付義務の発生やその課税価格の決定は、登記の時とは限らない。原告英子は昭和三二年二月一二日本件(二)の土地、建物を口頭の契約によつて贈与されたものであるが、贈与当時その引渡を受けたことは、当事者間に争いない。不動産の贈与については、引渡しがあれば、登記がなくても取消しできないから、昭和三二年二月一二日当時の右土地建物の価格を課税価格として、贈与税の納付義務が発生したというべきである。
贈与税は申告主義をとるから、原告英子は、法定の申告書提出期間内に右課税価格をもつて贈与税の申告をすることにより、当時の時価に従い課税された筈である。したがつて、昭和三八年に至り、昭和三七年七月五日の登記の時に贈与があつたとして課税されたため、贈与当時申告したならば課せられたであろう税額よりも多額の税を納付することになつたとしても、それは同日贈与があつた旨申告したか、または申告が遅れたために税務署長によつて登記の日に贈与があつたものとして更正もしくは決定されたことによるものと解する外はない。自ら贈与を受けながら、申告を怠つたために多額の贈与税が課せられたとしても、その責を贈与者の移転登記の遅滞に帰するのは、責任転嫁も甚だしい。いずれにしても、課税額が多額になつたことと被告が贈与の時に登記手続をしなかつたこととは、相当因果関係を欠くものといわなければならない。(岩村弘雄 堀口武彦 小林亘)